Eri ITOHASAS に関する調査報告書1: ASAS の概念とPackage 1 の応用方式 伊藤 恵理*...

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ASAS に関する調査報告書 1: ASAS の概念と Package 1 の応用方式 伊藤 恵理* The 1 st Edition of ASAS R&D Trend Report: Focus on the Concepts of ASAS and Package 1 Applications Eri ITOH Abstract This paper reports trends in R&D of Airborne Separation Assistance System (ASAS). ASAS applications are expected to contribute to improvement in current Air Traffic Management (ATM) system and to smooth transition towards a future ATM system. ASAS R&D is being conducted globally. The way to apply ASAS is being discussed for an early implementation. The aim of this report is to provide state-of-the-art information concerning ASAS applications. Firstly, the concept of ASAS is explained to ensure a common understanding. Secondly, ASAS Package 1 applications are described which have been discussed in the ASA (Airborne Separation Assistance) group during the ASAS-RFG (Requirements Focus Group) meeting. Major topics as In-Trail Procedure (ITP), Visual Separation Approach (VSA), and Sequencing and Merging (S&M), are presented based on trend survey at the ASAS-RFG meeting held on July 2007 and January 2008. *航空交通管理領域 1

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ASAS に関する調査報告書 1:

ASAS の概念と Package 1 の応用方式

伊藤 恵理*

The 1st Edition of ASAS R&D Trend Report: Focus on the Concepts of ASAS and Package 1 Applications

Eri ITOH

Abstract This paper reports trends in R&D of Airborne Separation Assistance System (ASAS). ASAS applications are expected to

contribute to improvement in current Air Traffic Management (ATM) system and to smooth transition towards a future ATM system. ASAS R&D is being conducted globally. The way to apply ASAS is being discussed for an early implementation. The aim of this report is to provide state-of-the-art information concerning ASAS applications.

Firstly, the concept of ASAS is explained to ensure a common understanding. Secondly, ASAS Package 1 applications are described which have been discussed in the ASA (Airborne Separation Assistance) group during the ASAS-RFG (Requirements Focus Group) meeting. Major topics as In-Trail Procedure (ITP), Visual Separation Approach (VSA), and Sequencing and Merging (S&M), are presented based on trend survey at the ASAS-RFG meeting held on July 2007 and January 2008. *航空交通管理領域

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ASAS 応用方式は以下の 4 種類に分類される。 1. まえがき

ATSA(Airborne Traffic Situational Awareness

applications: 航空交通状況認識を向上させる応用

方式):

ASAS (Airborne Separation Assistance

System)とは機上間隔維持支援システムと呼ばれ、

航空機内に周辺を飛行する航空機の交通状況を提

供し交通整理に利用できるようにするための地上、

機上装置を含めた総合システムのことである。

ASAS が導入されると、現在の航空交通管理業務の

一部はフライトクルーが分担できるようになり、航

空管制官のワークロード低減、それに基づく管制効

率、航空の安全性向上等が期待できるため、将来的

には世界規模の適用が期待され、欧米を中心に研究

開発が進められている。しかし、我が国では ASAS

に関して未だ十分な研究が行われていない。したが

って、電子航法研究所では 2007 年度「ASAS に関

する予備的研究」で欧米における ASAS に関する

研究・開発動向を調査した。本報告書はこの調査か

ら得られた知見をまとめる。

空域と空港面において周囲の航空交通に関し

てフライトクルーの状況認識を高める。これ

により、安全かつ効率的な飛行管理を目指し、

フライトクルーを支援する。機体間隔保持の

タスクや責任の所在は現在と変わらない。

ASPA(Airborne SPAcing applications:航空機の

間隔づけに関する応用方式):

フライトクルーは、管制官の指示した航空機

との間隔づけを行う。フライトクルーは新し

いタスクを負うが、距離間隔保持は管制官の

責任下であり、適用される最小間隔は現在の

ままである。

ASEP(Airborne SEParation applications:航空

機の距離間隔保持に関する応用方式): まず、ASAS の概念と、現在検討されている応用

方式を説明する。そして、2007 年度に筆者が出席

した ASAS-RFG(Requirement Focus Group)会議

の趣旨と議論内容をまとめる。2007 年度に筆者の

参加したのは、第 12 回(2007 年 7 月 10 日から 13

日、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッ

ジにて開催)と第 14 回(2008 年 1 月 22 日から 25

日、アメリカ合衆国フロリダ州メルボルンにて開

催)の ASAS-RFG 会議である。

機体間隔保持の責任とタスクは、管制官から

フライトクルーに移動する。ただし、管制官

が指定した航空機、時間帯、空域等、限定さ

れた対象に関して、フライトクルーが間隔保

持の責任を負う。これらの環境外では、機体

間隔保持は管制官の責任である。実施におい

て、新たな機体距離間隔の基準が必要となる。

SSEP(airborne Self-SEParation applications:

航空機が自律して距離間隔保持を行う応用方式):

機体距離間隔の基準とルールに従い、フライ

トクルーが航空機の間隔保持を行う。 2. ASAS の概念

2.1 ASAS とその応用方式 2.2 ASAS 応用方式の機能

2001 年 6 月、FAA と Eurocontrol が ASAS の運

用に関して将来の展望を発表している[1]。文献[1]

は、 ASAS の概念と ASAS 応用方式 (ASAS

Application)を以下のように定義している。

ASAS 応用方式の実現に必要な機能は、以下のよ

うにまとめられている[1]。

航 空 機 監 視 機 能 ( Airborne surveillance

function): ASAS :

フライトクルーに、飛行間隔保持を可能とす

るよう周囲の交通情報を提供する航空機シス

テム

自機を取り巻く航空機を監視する。ADS-B

( Automatic Dependent

Surveillance-Broadcast)の利用を想定し、位

置や速度等の情報を定期的にブロードキャス

トする。フライト番号、登録番号、機種、性

能、近い将来に予想される飛行経路などの情

ASAS 応用方式 :

定義した ASAS の運用目的を達成するために、

フライトクルーと航空管制官に与える運用手

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報を流す。風、気温、飛行の不確定性や完全

性のカテゴリー、機内に搭載された航行や監

視システムの状態を与えることも可能である。

位 置 情 報 は GNSS ( Global Navigation

Satellite System)、交通データは ADS-B 以外

に も TIS-B ( Traffic Information

Service-Broadcast)などのソースを利用する

ため、適用の際には、ソースの精度、完全性、

適用可能な時間などを考慮しなければならな

い。

デ ー タ リ ン ク 通 信 ( Other data-link

communications):

航空機監視機能を補完する目的で、航空機間

のデータ通信、そして航空機と地上のデータ

通信が必要となる。

航空機間のデータリンク通信:例えば、コン

フリクト回避に関する情報など、ブロードキ

ャストするより、対応する航空機間で共有す

る方が適切な情報を通信する。

航空機と地上のデータリンク通信:後述する

航空交通管理機能(ATM function)のために利

用されるデータを通信する。

交通情報の表示(Display of traffic information):

フライトクルーに交通情報を表示するディス

プレィを与える。大部分の情報は CDTI

(Cockpit Display of Traffic Information)に

表示する。表示には、航空機監視、FMS(Flight

management System)、フライトクルーなど

からの入力を利用する。現在の CDTI には主

に自機に関連した交通情報を表示しているが、

周囲の交通が表示される場合には、他機のデ

ータタグ(高度、ID など)をシンボルの近く

に表示すること、目標速度はシンボルからの

ベクトルとして表示することなどが考えられ

る。アラートが発生した場合は、聴覚のみな

らず、ディスプレィでクルーの視覚に働きか

ける。SSEP に関しては、上昇や降下のプロ

ファイルを表示する垂直方向の表示を与え、

コンフリクトの検出・回避のための状況判断

を向上させる必要が考えられる。

交通情報処理機能(Traffic information processing

functions):

これは ATSA に関連しており、アラートが発

生した場合に目標機の色を変えて表示する、

フライトクルーが目標機の表示位置を過大に

信頼するのを防ぐために、目標とする航空機

の位置やそれに関する不確定性を表示する、

などの処理機能である。空域と空港面の両方

で運用を考え、フライトクルーが周囲の交通

状況を把握できる環境下において、状況判断

能力を向上するよう表示させる。

航空機の間隔づけと距離間隔の機能(Airborne

spacing and separation functions):

フライトクルーが、目標時間や自機と目標機

間の距離または最小距離間隔を実現するよう

に支援する。距離間隔が保持できなかった場

合や飛行経路からの逸脱など危険な事態が発

生した場合、適切なガイダンスと共にアラー

トを出す。フライトクルーの状況認識を高め

る機能(例えば、ディスプレィ表示やアラー

ト装置)をより充実させること、さまざまな

範囲の自動化(最も高度な自動化としては

FMS によるトラジェクトリ修正)の利用も有

効であると考えられる。アラートは、他のア

ラートと区別可能でなければいけない。

航空交通管理機能(ATM functions):

航空交通管理に関する自動化システムの導入

が考えられる。フライトクルーを支援する自

動化システムとしては、戦略的なコンフリク

ト回避方法や、周囲の交通を考慮したコンフ

リクト回避手順を与えるものが考えられる。

フライトクルーと自動化システムは相互に作

用して理想的なトラジェクトリを実現する。

SSEP においては、トラジェクトリを計画す

る支援ツールが必要とされるかもしれない。

2.3 ASAS と ACAS(Airborne Collision Avoidance

System)

上述のように、ASAS 機能はアラートやアドバイ

ザリを含んでいる。これと類似するシステムとして

ACAS(Airborne Collision Avoidance System)が

実用化されている。ASAS と ACAS の根本的な違

いは、ASAS が ADS-B 信号に載った他機の情報を

機上に提供して航空機の制御に利用するのに対し、

ACAS はフライトクルーに、コンフリクト防止のた

めに周囲の交通情報を与える点である。このため、

両者が与える交通情報の種類と求められるデータ

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の精度が異なる。

ICAO は ACAS を以下のように定義している。 2.4 ASAS により改善が期待される問題点

ACAS: ASAS の適用により、コックピットに周囲の交通

情報を提供する。これは、航空交通管理のタスクが

管制官(地上)からフライトクルー(機上)に移動

していくことを意味しており、安全性、効率、環境

などの問題改善が期待される。

地 上 装 置 と 独 立 し た SSR (Secondly

Surveillance Rader)トランスポンダーの信号

に基づき、フライトクルーに、コンフリクト

を起こす可能性のある航空機に関して助言を

与える。ただし、航空機は SSR トランスポン

ダーを搭載する必要がある。 安全性の観点からは、フライトクルーに直接交通

情報を表示するので、管制官との音声通信量が減少

し、音声通信に生じるヒューマンエラーの頻度が減

少する。また、ASAS が利用する他機の情報を利用

して、より適時なコンフリクト回避方法をフライト

クルーに与えるなどの機能を持つ新しい自動化シ

ステムの導入も期待される。

文献[1]では、ASAS 応用方式が適用される航空

機が ACAS を搭載している場合、または一方の航

空機は両方を搭載しているがもう一方は搭載して

いないなどの場合を想定し、ASAS と ACAS の関

係について以下のようにまとめている。 航空交通管理のタスクがユーザー側(機上)に移

ることでユーザーの希望を反映し、時間管理、燃料

消費量などの観点から効率の良い運航が実現する

と考えられている。また、管制官のワークロードを

減らすことにより、到着/出発機数やセクター内の

機体数が増えることも期待されている。

ASAS 応用方式では、ACAS の監視機能を利用し

てはいけない。これは、ACAS SSR の干渉を防止

するために監視に制約があり、ASAS 応用方式の機

能を十分に発揮する精度のトラッキングができな

いからである。

ACAS は必ずしも交通情報の表示が必要ではな

いが、表示が与えられる場合は ASAS 用のディス

プレィと共有する可能性がある。その場合は ASAS、

ACAS に対してそれぞれ 1 機の目標機を表示する

が、同じ目標機を追跡している場合は ASAS の目

標機のみをディスプレィに表示しなければいけな

い。ACAS と ASAS がそれぞれ別の目標機をトラ

ックした場合は、どのシステムに対応する機体なの

か、CDTI で明らかにしなければならない。ASAS

は、ASAS 監視に基づいて行わなければならず、

ACAS 監視により得た情報をもとに ASAS を適用

してはならない。

ユーザーが燃料消費量を減らす努力をすること

で、環境への負荷が小さくなることも期待されてい

る。

ただし、このような効果は、応用方式や適用環境

に依存するため、ASAS を適用する前の十分な検討

が必要であると考える。また、高度な自動化システ

ムの導入を視野に入れて、将来像が描かれている印

象を受ける。

3. ASAS-RFG 会議

3.1. ASAS Package とは ASAS と ACAS のアラートは、フライトクルー

が完全に区別できなければいけない。ASAS のコン

フリクトアラートは ACAS アラートの前に発生す

べきであるが、どちらもアクティブな状態では両方

のアラートが発生する可能性もある。ASAS が安全

に機能していても、ACAS が誤警報を発生する場合

があり得る。ASAS が機能している場合、ACAS の

アラートを抑止するか、他の技術的解決法がとられ

るべきなのか、またどのような環境においてそれが

有効であるかなど、要検討である。ASAS と ACAS

は互いに補完し合う技術として望まれる。

本節では、ASAS 研究・開発の展望と、ASAS-RFG

会議を開催する背景を、 “CARE/ASAS Action:

CARE/ASAS Activity 5 Description of a first

package of GS/AS applications version

2.2-September 30, 2002 [2]”に基づいて説明する。

CARE/ASAS とは、Eurocontrol R&D Committee

が中心となって 1999 年に発足させた組織であり、

ヨーロッパにおける ASAS 研究やプロジェクトを

協調させ支援する役割を担っている。これまでに、

以下の活動が進められている。

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Activity 1:

ヨーロッパで実施した過去の ASAS 研究を再

検討する。

Activity 2:

ASAS 応用方式について、評価指標や評価シ

ナリオ、ケーススタディの例や構成要素など

のガイダンスを与える。

Activity 3:

最小機体間隔の決定に関するシミュレーショ

ンを実施し知見を反映させる。

Activity 4:

ヨーロッパで研究した ASAS 応用方式を再検

討する。

Activity5:

ASAS 応用方式の実用化に向けて指針を示す。

こ れ ら の 活 動 成 果 を ま と め た 書 類 は 、

http://www.eurocontrol.int/care-asas/public/site_

preferences/display_library_list_public.htmlより

ダウンロードできる。

文献 [2]のタイトルにも入っているように、

GS/AS とはそれぞれ Ground Surveillance(地上監

視)/Airborne Surveillance(機上監視)に対応し

ており、GS/AS 応用方式は、ADS-B 応用方式、

TIS-B 応用方式、ASAS 応用方式、とも呼ばれる。

本報告書では、一貫して ASAS 応用方式と呼ぶ。

ASAS 応用方式は、さまざまな応用方式をセット

にした“パッケージ”として扱われる。これは、ASAS

応用方式が網羅する範囲が非常に大きいこと、これ

を実現するために機上と地上で対応した開発が必

要になることの理由により、実用化のレベル別に機

上と地上の応用方式をまとめて(パッケージ化し

て)いるからである。これまでに、Package1,

Package 2, Package 3 という 3 つの応用方式のセ

ットが提案されている。(最近では、Package 1 で

まとまりきらなかった応用方式を Package 1.5 と

して取り扱うことが新たに提案されている。)

Package 1 は、今後 5 年から 10 年程度の間に実

用化を目指すレベルの応用方式をまとめている。ユ

ーザーのニーズの視点からは、ASPA に重点をおき

(ASEP と SSEP は開発にさらなる時間がかかる

ため)、既存のシステムを大きく変える必要がなく、

欧米においてすでにシミュレーションや実験が実

施されており、産業としても市場が確保できる分野

を対象としている。Package 1 が網羅する地上監視

(GS)と機上監視(AS)に対応する ASAS 応用方式は

以下の通りである。

【ASAS Package1 GS 応用方式】

ADS-B-ACC ( ATC surveillance for en-route

airspace: エンルートにおける航空管制監視):

エンルートにおいてレーダーを利用した航空

管制監視を向上させる。例えば、シングルレ

ーダーの受信地域を対象にする。

ADS-B-TMA ( ATC surveillance in terminal

areas: ターミナル領域における航空管制監視):

ターミナル領域においてレーダーを利用した

航空管制監視を向上させる。例えば、低高度

や地形の影響を受ける地域での運用、シング

ルレーダーの受信地域を対象にする。

※ただし、後に ADS-B-ACC と ADS-B-TMA

は ま と め ら れ 、 ADS-B-RAD (ADS-B

surveillance in radar airspace)となった。

ADS-B-NRA ( ATC surveillance in non-radar

areas:ノーレーダー空域における航空管制監視):

レーダーが利用できない地域、例えば遠隔地、

岸から離れた地域、交通量やコストの関係でレ

ーダーが導入されない大陸や洋上のある空域

において航空管制監視を向上させる。目的は、

交通情報と距離間隔のサービスを提供するこ

とである。

ADS-B-APT(Airport surface surveillance:空港

面での監視):

(SMGC(Surface Movement Guidance and

Control System)が導入されているか否かに

かかわらず)空港面における航空管制監視の

安全性と効率を高める。航空機のみならず、

空港面で走行する移動体も対象とする。

ADS-B-ADD(Aircraft derived data for ground

tools:地上システムのために航空機が送信するデ

ータ):

航空管制のツール、例えばディスプレィ、

MTCD(Middle Term Conflict Detection)、

AMAN ( Arrival Manager )、 DMAN

(Departure Manager)、 地上の安全管理な

どを向上・発展させる目的で、地上システム

で利用するために、ADS-B を通して航空機か

ら(現在地上に与えられていない)情報を取

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得し、地上システムに入力する。

【ASAS Package1 AS 応用方式】

ATSA-SURF ( Enhanced traffic situational

awareness on the airport surface:空港面におけ

る交通の状況認識の向上):

気象状況を限定せず、誘導路と滑走路の運用

において、フライトクルーの交通状況認識を

向上させる。目的は、誘導路が交差している

場合、滑走路に入る前、プッシュバック時な

どにおいて安全性を向上させ、夜間の視覚の

悪い状況においてもタキシングにかかる時間

を減らすことである。

ATSA-AIRB ( Enhanced traffic situational

awareness during flight operations:航空業務中

の交通状況認識の向上):

視覚状況にかかわらず、フライトクルーの交

通状況認識を向上させる。フライトクルーに、

航空管制官または他のフライトクルーが与え

た交通情報を補完する目的で、主にディスプ

レィ表示を介して追加情報を提供する。小型

機も対象とする。

ATSA-S&A(Enhanced visual acquisition for see

& avoid:フライトクルーが衝突を回避するための

視覚情報取得の向上):

機体間隔保持のサービスが航空管制から提供

されない場合に、フライトクルーが衝突回避

を行う。

ATSA-SVA ( Enhanced successive visual

approaches:連続的な有視界進入の向上 ただし、

ASAS-RFG 会議では ATSA-VSA (Enhanced

visual separation on approach : 有視界進入にお

いてフライトクルーが距離間隔を保持する手段の

向上)として扱われている。):

フライトクルーが、先行機との間隔を保持する

責任を負う有視界進入を支援する。目的は、有

視界進入において滑走路の処理能力を高め、交

通密度の高いエリアでも安全に運用すること

である。

ASPA-S&M(Enhanced sequencing and merging

operations:(航空交通流の) 順序づけと合流に関す

る運用の向上):

航空管制官とフライトクルー間で、航空交通

流の順序づけと合流に関するタスクを再分配

する。航空管制官には、指定した他機と時間

や距離の間隔を保持するようフライトクルー

に指示ために、新しい指示基準を与える。フ

ライトクルーは、新しいヒューマン・マシン

インターフェースを利用して、新しいタスク

を達成する。目的は、航空管制官のワークロ

ードを減らすこと、また航空密度の高い地域

においても最小機体間隔を実現することであ

る。

ASPA-ITP ( In-trail procedure in oceanic

airspace:洋上空域において効率よく一列縦隊の航

空交通流を作る手順 ただし、ASAS-RG 会議では

“ATSA-ITP”と改訂された。):

レーダーが利用できない洋上空域において、

ADS-B を搭載して縦隊で列を組んで飛行中

の航空機が、より柔軟に他のフライトレベル

に上昇・下降することを可能とする新しい手

順を与える。目的は、フライトレベルの変更

を積極的に取り入れて、燃料消費量を削減し

たり、タービュランスが発生しているフライ

トレベルを避けたりすることにより、NAT

(North Atlantic Religion) などの洋上空域の

利用を向上させることである。

ASPA-C&P ( Enhanced crossing and passing

operations:(航空交通流の) 交差と追い越しに関す

る運用の向上):

目的は、コンフリクトを回避するために、例

えばフライトクルーにある間隔を保ちながら

指定された交通流を通過・交差するなどの、

新しい指示の出し方を航空管制官に可能にす

ることである。フライトクルーは、新しいヒ

ューマン・マシン インターフェースを駆使し

て目的を達成する。タスクの再編成と合理化

により、管制官の可能性を広げる。

Package 1 に続く将来の GS/AS 応用方式は、

Package 2、Package 3 にまとめられる予定である。

それぞれのパッケージが網羅する範囲は以下のよ

うに提案されている。

Package 2

Package 1 に含まれる GS/AS 応用方式のさら

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図 1 ASAS-RFG会議で実施される各作業の関係

なる向上

交通密度が高い空域における ADS-B のみに

よる監視

ASEP 応用方式

交通密度が低い空域における SSEP 応用方式

Package 3

Package 2 に含まれる GS/AS 応用方式のさ

らなる向上

交通密度が中程度または高い空域における

SSEP 応用方式

以上の Package 1 で提案されている応用方式は、

現状の運用改善のために提案されているが、現場で

使用するためには具体的な運用手順の定義 (AD:

Application Definition/Description) が必要とさ

れる。そして、運用手順を実現するために必要なサ

ービスと環境の定義 (OSED: Operational Service

and Environment Definition/Description) と、実

際に運用する際にそれが安全であるかの評価

(OSA: Operational Safety Assessment)、効率的で

あるかの評価 (OPA: Operational Performance

Assessment)を行い、安全性と効率に関する要件

(SPR: Safety & Performance Requirements:) を

示す必要がある。さらに、最低限の運用共通性を各

国 で 保 障 で き る か の 評 価 (IA/INTEROP:

Interoperability Assessment) を行い、共通基準を

まとめる必要もある。すなわち、ASAS 応用方式を

具体的に定義し、要件をまとめるための討議の場が

必要となった。これらが ASAS-RFG 会議開催の背

景 で あ る 。 Package 2 に 関 し て は 、

FAA/EUROCONTROL AP23 (Action plan 23) 会

議にて応用方式の選択が進められており、

ASAS-TN 会議(http://www.asas-tn.org/)で報告が

始まっている。

ASAS-RFG 会議は、それぞれの応用方式に対し

て、以下のサブグループを持つ。

AD-SG (Application Definition/Description

Sub Group): ASAS 運用方式の定義を担当し、

OSED を作成する。

SPR-SG (Safety and Performance

Requirement Sub Group): ASAS の性能・安

全性解析を担当し、OPA および OSA を実施

して SPR を作成すると共に、それに関連して

必要な参考技術資料を作成する。

INTERP-SG (Interoperability Sub Group):

アプリケーションの運用共通性の分析と標準

化を担当し、INTEROP を作成する。

それぞれの作業の関係を図 1 に示す。過去に

SPR-SG から AD に関するコメントが多数発生し

た経緯もあり、実質的には両者が合同で会議をする

こ と に な っ た 。 最 近 で は 、 GSA ( Ground

Surveillance Application )と ASA ( Airborne

Surveillance Application)というグループに分か

れて議論を行う。GSA は GS 応用方式、ASA は AS

応用方式に対応した作業を受け持っている。

3.2. RFG 会議の様子

ASAS-RFG 会議は年に 4 回開催されている。第

12 回 ASAS-RFG 会議は、2007 年 7 月 10 日から

13 日にかけて、アメリカ合衆国マサチューセッツ

州ケンブリッジのボルプセンターで開催された。ア

メリカ (NASA、FAA、Boeing、MITER など)、

EU (Eurocontrol、Airbus、Helios など)、オース

トラリア (Airservice Australia)、カナダ (NAV

CANADA)、日本 (電子航法研究所)からの参加があ

った。ASA では、ATSA-ITP と ATSA-VSA が議論

された。第 14 回 ASAS-RFG 会議は、2008 年 1 月

22 日から 25 日にかけて、アメリカ合衆国フロリダ

州メルボルンのヒルトンホテルで開催された。アメ

リカ (NASA、FAA、Boeing、MITER など)、EU

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【OSED】 (Eurocontrol、Airbus、Helios など)、オーストラ

リア (Airservice Australia)、日本 (電子航法研究

所)からの参加があった。ASA では、EUROCAE

の出版物として草稿がまとめられた ATSA-ITP の

最終調整が中心であった。ATSA-VSA では OSA の

OH (Operational Hazard: 危険を生じ得る現象)が

検討された。これから本格的な議論が始められる

ASPA-S&M に関して説明があった。

燃料消費量を削減させるなどの運航効率を向上

させる目的で、洋上空域を飛行する航空機が希望す

る高度変更の実施頻度を増加する。これまでは、高

度変更の際に通過する中間高度帯でも既存の最小

縦間隔を満たさなければならなかったが、ITP では

ITP 機(ITP aircraft: 高度変更を行う航空機) と参

照機(Reference aircraft: 高度変更前と変更後の中

間の高度帯を飛行し、既存の最小縦間隔が満たされ

ていない航空機)の間隔づけに、新しく提案する

ITP 基準 (ITP criteria) を適用して高度変更を可

能とする条件を緩める。 ITP の対象となるのは、

ITP 機と参照機が 6 種類の状態(図 3 から図 10)

にある場合である。ただし、高度変更は±4,000ft

の範囲内に限られる。また、ITP は ITP 機と参照

機に適用される手順であり、それ以外の航空機には

適用されない。(他機には既存の間隔づけの手順が

適用される。) 参照機は 1 機または 2 機を対象とす

る。

ASAS-RFG 会議は、前回の会議で議論された内

容をもとに、これまでの議論をまとめた資料を改編

したものをメンバーにメールで送り、それに対して

寄せられたコメントに関して議論する、という進め

方をする。これまでの会議やワーキングメンバーに

よって作成された資料は、Eurocontrol の Onesky

チームのウェブ上に公開される。(ダウンロードで

きるのは、ASAS-RFG メンバーに限られる。)議論

に関連した話題の提供も歓迎されている。参加者の

バックグラウンドは、航空管制官、フライトクルー、

研究者、エンジニアなどさまざまである。

筆者は ASA グループに参加しているので、3.3

節から 3.5 節は ASA グループで議論された AS 応

用方式である ATSA-ITP、ATSA-VSA、ASPA-S&M

に関してまとめる。

3.3. ATSA-ITP

A Following Climb: 参照機が ITP機の前方を

飛行中に、高度を上昇させて実施する ITP(図

3、4)

A Following Descent: 参照機が ITP機の前方

を飛行中に、高度を降下させて実施する ITP

(図 5) ITP は ASA グループの中で最も議論が進んでい

る応用方式である。筆者が参加した時点ではすでに、

SPR や INTEROP の要件がまとめられ、最終調整

段階にあった。2008 年には、文献[3]が EUROCAE

の出版物としてまとめられた。本文では ITP の

OSED をまとめ、SPR と INTEROP の要件は付属

1 にまとめる。

A Leading Climb: 参照機が ITP 機の後方を

飛行中に、高度を上昇させて実施する ITP(図

6)

A Leading Descent: 参照機が ITP 機の後方

を飛行中に、高度を降下させて実施する ITP

(図 7)

A Combined Leading-Following Climb: 2機

の参照機の間を通過し、高度を上昇させて実

施する ITP(図 8, 9)

A Combined Leading-Following Descent: 2

機の参照機の間を通過し、高度の降下により

実施する ITP(図 10)

ITP 実施の主な条件として、以下のものがあげら

れる。

図 2 第 12 回 ASAS-RFG 会議 ASA グループの討

議の様子

ITP 開始条件として、縦の機体間隔が 10NM 以上

保障されていること

8

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図 3 ITP- A Following Climb

図 4 ITP- A Following Climb

図 5 ITP- A Following Descent

(参照機が 1 機の場合) [3]

(参照機が 2 機の場合) [3]

(参照機が 1 機の場合) [3]

ITP Aircraft

Reference Aircraft

FL360

FL340

FL350

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

Other Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

ITP

Criteria

Other Aircraft ITP Aircraft

FL340

FL350Reference Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

FL360

Current Longitudinal

Separation Minimum

FL370Other Aircraft Other Aircraft

Reference Aircraft

ITP Criteria

Other Aircraft ITP Aircraft

Reference Aircraft

FL360

FL340

FL350

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

ITP Criteria

Current Longitudinal

Separation Minimum

9

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図 6 ITP- A Leading Climb

図 7 ITP- A leading Descent

図 8 ITP- A Combined Leading-Following Climb

(参照機が 1 機の場合)[3]

(参照機が 1 機の場合)[3]

(2 機の参照機が同じ高度を飛行している場合) [3]

ITP Aircraft

FL360

FL340

FL350

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Reference Aircraft Reference Aircraft ITP Criteria

ITP Criteria

ITP Aircraft FL360

FL340

FL350

Reference Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft ITP Criteria

ITP Aircraft

FL360

FL340

FL350

Reference Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

Other Aircraft

ITP Criteria

Current Longitudinal

Separation Minimum

10

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図 9 ITP- A Combined Leading-Following Climb

[3]

図 10 ITP- A Combined Leading-Following

場合)[3]

(2 機の参照機が異なる高度を飛行している場合)

Descent(2 機の参照機が同じ高度を飛行している

FL360

FL340

FL350

ITP Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Other Aircraft Other Aircraft

Current Longitudinal

Separation Minimum

Reference Aircraft Reference Aircraft ITP Criteria

ITP

Criteria

ITP Aircraft FL340

FL350

Current Longitudinal

Separation Minimum

FL360

Current Longitudinal

Separation Minimum

Reference Aircraft

Reference Aircraft ITP Criteria

ITP Criteria

FL370Other Aircraft Other Aircraft

11

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AC-FC: A Flight Level change is

図 11 ITP- 開始段階 [3]

P1: ITP Initiation Flight Crew

1.2.1 AC-FC:

To 2.1.1

Request ITP Flight Level change with Reference Aircraft

Reference Aircraft conditions fulfilled

Acceptable aircraft

1.1.1 AC-FC: Determine if a standard Flight Level change seems possible

Standard Flight Level change possible Standard Flight Level change not

1.1.2 AC-FC: Identify Requested Flight Level and Intervening Flight Levels

To 4.1.1

1.1.5 AC-FC: Identify Reference Aircraft from set of Potentially Blocking Aircraft

1.1.4 AC-FC: Check for Potentially Blocking Aircraft

Potentially Blocking Aircraft No Potentially Blocking Aircraft

ITP Criteria not met

Performance does not allow change

Flight Levels not identified

Flight Levels

1.1.3 AC-FC: Check if aircraft performance allows an ITP Flight Level change

Controller

Request received by Controller

12

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図 12 ITP- 指示段階 1/2 [3]

P2: ITP I

Request received by controller (1.2.1)

Controller

To 2.7.1

AC-FC responded to rejection

To 2.3.1

2.1.1 GND-ATC: Determine if a Flight Level change is possible

ITP accepted

Not all conditions fulfilled, request not approved

Reference Aircraft are only blocking

Blocking aircraft not referenced, request not approved

2.1.4 GND-ATC: Determine if Reference Aircraft are the only blocking aircraft

Flight Level change possible

Standard Flight Level change approved

2.1.2 GND-ATC: Determine if a standard Flight Level change can be approved

Blocking aircraft exist

2.1.5 GND-ATC: Ensure request is consistent with ITP requirements

Requested Flight Level not available, ITP Aircraft is a Reference Aircraft, or other operational issues preclude clearance

Reference Aircraft properly identified

Reference Aircraft not properly identified, request not approved

2.1.3 GND-ATC: Determine that Reference Aircraft are properly identified in request

2.2.1 GND-ATC: Issue ITP clearance

ATC clearance

2.6.1 GND-ATC: Reject request

13

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図 13 ITP- 指示段階 2/2 [3]

P2: ITP Instruction (continued)

Flight Crew

To 3.1.1 To 4.1.1

Clearance accepted

Positive

2.5.1 AC-FC: Reject clearance

Negative

Clearance rejected

2.4.1 AC-FC: Accept clearance

ATC clearence (2.2.1)

To 4.1.1

ATC rejection (2.6.1)

2.7.1 AC-FC: Acknowledge rejected request

Acknowldgerejection

2.3.1 AC-FC:

Re-assess ITP criteria

14

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図 14 ITP- 遂行段階

図 15 ITP- 終了段階

P3: ITP Execution

4.1.1 Use standard procedures

P4: ITP Termination

From 1.1.1, 1.1.2, 1.1.3, 1.1.4, 1.1.5, 2.1.1, 2.5.1, 2.6.1, 2.7.1,

4.1.2 Abnormal termination

From 3.1.1

3.2.1 AC-FC: Report established at new flight level

Flight Crew

3.1.1 AC-FC: Perform ITP maneuver

Clearance accepted (2.4.1)

Successful change of Flight Level

Unable to complete ITP

maneuver Controller

Report sent3.3.1 GND-ATC: Receive altitude report

Resume standard procedures

To 4.1.1 To 4.1.2

15

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ITP 開始条件として、ITP 機と参照機の間隔

が 15NM 以上であり対地速度の差が 20kts 以

下であること、または ITP 機と参照機の間隔

が 20NM 以上であり対地速度の差が 30kts 以

下であること

ITP 機の上昇・降下率は 300fpm 以上である

こと

ITP 機のクルーズのマック数は一定であるこ

参照機は ITP 中にマヌーバしないこと(ただ

し、コース変更が±45 度以内であり、マヌー

バ前と同じ経路を飛行する場合は、マヌーバ

と見なさない。)

ITP 機と参照機に求められる装備としては、

ITP 機は、ITP の実施に必要な ADS-B データ

を受信し、処理し、ディスプレィに表示可能

であること

参照機は、ADS-B データを送信可能であるこ

などが満たされる必要がある。

ITP は、次の 4 段階で実施される。

1. ITP の開始段階(ITP Initiation phase):

フライトクルーは、ITP が実施可能な環境であ

るか確認する。参照機を確認し、管制官に ITP

をリクエストする。

2. ITP の指示段階(ITP Instruction phase):

管制官は ITP の実施を判断し、フライトクル

ーは指示を確認する。

3. ITP の遂行段階(ITP Execution phase):

ITP 基準(速度、機体間隔、上昇・下降等の基

準)を満たしながら、ITP を実行する。

4. ITP の終了段階(ITP Termination phase):

目標高度に達してから ITP を終了する。

図 11 から 15 に、文献[3]より各段階の具体的な

運用手順を抜粋する。ただし、図中の“Potentially

Blocking Aircraft”とは、ITP 機の変更前と変更後

の高度間に介在し、ADS-B データが ITP 機におい

て利用可能な航空機のことを指す。参照機もこの中

に含まれる。

3.4. ATSA-VSA

VSA は、前節にまとめた ITP と比較して議論の

進捗状況が遅く、AD が発表され[4]、OSED、OPA、

OSA[5][6]に関する議論が進んでいる最中である。

そこで以下に、AD の概要と OSED、OPA、OSA

に関する議論内容をまとめる。

【AD】

視認進入をより習慣的に行い滑走路の運用をよ

り効率化するために、CDTI (Cockpit Display of

Traffic Information)を使用して有視界進入時にお

ける先行機の位置認識を支援し、フライトクルーの

ワークロードを減らしながらより安全に先行機と

の距離間隔を保持する。先行機の ID をディスプレ

ィに表示するものを Advanced procedure、表示し

ないものを Basic Procedure と区別している。VSA

では、ディスプレィ表示の利用が現行の視認進入と

異なるポイントである。 以下にフランクフルト空

港への適用例を利用し、VSA のメリットを紹介す

る [4](図 16、17)。

図 16、17 に示されるように、フランクフルト空

港では、1700ft (518m)離れた平行滑走路を着陸に

利用している。滑走路が隣接しているため、独立し

て平行に着陸することができない。滑走路の容量を

最大限に生かすため、管制官による最小距離間隔は

3NM と設定されている。十分に訓練を積むと、フ

ライトクルーによる視認進入の際の最小距離間隔

は約 1NM まで縮められることが報告されており、

これによる滑走路の容量の増加が期待される。この

ため、VSA(ディスプレィ表示の利用)の効果があ

ると考えられている。

図 16 では、AC2 に視認進入がすでに許可されて

おり、AC3 は AC2 と管制間隔を保持して進入中で

ある。ILS 進入中の AC4 に、管制官は AC3 の飛行

情報を伝える。AC4 のフライトクルーは、ディス

プレィの交通情報とコックピットの窓から見える

先行機を確認する。先行機が確認できれば視認進入

が許可され、図 17 に示されるように、AC4 はディ

スプレィを確認しながら、先行機 (AC3)と 1.0NM

程度の距離を保持し、AC3 の速度が遅くなって距

離が近づきすぎないよう、また追い越しをしないよ

うに着陸操作を行う。

16

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【OSED】

前述の通り、VSA ではディスプレィ上にフライ

ト ID を表示する Advanced procedure と、ID を表

示しない Basic procedure が提案されている。

OSED では、フライト ID の利用に関して活発に議

論されており、具体的には以下の意見が寄せられて

いる。

フライト ID をコックピットに表示すれば、

見間違いなどの安全性に関連する問題が発生

するかもしれない。

Advanced procedure は、実現に向けて技術

的な課題が多く、期限内に VSA をまとめるた

めに間に合わない。Basic procedure だけなら

VSA の要件をまとめられるが、Basic は従来

の方式とあまり代わりがなく、導入するメリ

ットがあるのか不明である。

Basic procedureからAdvanced procedureに

移行する手順を考えておかなければならない。

Advanced procedure の安全性解析、ワークロ

ード評価法が不明である。

管制官やフライトクルーがフライト ID を聞

き間違えると危険である。

現状でも、フライトクルーは ACAS のディス

プレィを見て、管制通信を聞きながら、フラ

イト ID をディスプレィ上の位置表示と照ら

し合わせて利用している場合があり、フライ

ト ID は、他機との位置関係が分からなくな

る状態を防ぐメリットがある。

音声が重なる混信によってフライト ID が聞

き取れない場合がある。

このように、ディスプレィ表示を利用することに

よって防止できるヒューマンエラーと、新たに生じ

るヒューマンエラーと、どちらが頻繁に起こり得る

かなど、VSA のメリット自体が疑問視されている

段階であるため、OSED がまとまるまで更なる議

論と検討が必要な ASAS 応用方式だと判断される。

【OPA】

OPA ワーキンググループの活動が始まった段階

である。機能目的(Performance objectives)を具

体化し、表示と監視の要件をまとめることを当面の

課題としている。ADS-B を使用して先行機の位置、

速度、識別情報を得るが、大きな誤差を含む情報で

あっても高精度であるという誤った信頼性タグが

ふられる可能性も考えられるため、この検証のため

に ACAS 位置測定値を使用することも検討されて

いる。また、ACAS アラートやアドバイザリが発生

した場合は、VSA 実施中にも ACAS に対応する手

順を追加する必要があるため、これが VSA の運用

効果にどのような変化が見られるか、OSA ととも

に配慮されるべき事項になると考えられている[8]。

【OSA】

VSA の運用の際に考えられるハザード(危険因

子)を解析し、安全性の要件を提案する。ハザード

として以下の 5 つ(OH1-5)が同定されている[7]。

OH1: 先行機を間違って、目視による間隔保持

(visual separation)を実施する。

OH2: 正しい先行機と目視による間隔を保持して

いる際に、不適切なマヌーバを行う、または必要な

マヌーバを行わない。

OH3: 運用の開始の際に失敗する。(例えば、開始

の基準を満たさないのに VSA を始める、など。)

OH4: 目視による間隔保持を実施中に、ディスプレ

ィ上で先行機の表示を見失う。

OH5: 目視による間隔保持を実施中に、視界から先

行機を見失う。

現段階では、OH1、OH2 についてシナリオを作

成し、フォルトツリー(fault tree: ハザードを引き

起こす要因の系統図)、イベントツリー(event tree:

ハザードの結果としておこり得る事象の系統図)を

利用した安全性解析が進められている。

筆者が RFG 会議に参加した中では、OH1 のシナ

リオに注目した議論が中心であった。特に、前述の

フランクフルト空港のように、大きくカーブして滑

走路に進入するコースをとる場合(図 18)、先行機を

間違うケースが懸念されている。OH1 の結果と

して、先行機との最小距離間隔を保てなくなる場合

とコンフリクトを起こす場合について、イベントツ

リーを利用して解析している(図 19、20)。フォル

トツリーの例を図 21 に示す。

17

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図 16 VSA-フランクフルト空港の場合(1/2)[4]

図 17 VSA-フランクフルト空港の場合(2/2)[4]

18

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30o Intercept

a. 大きなバンク角を伴う着陸進入[7]

b. 並行進入[7]

図 18 OH1 の例:

Threshold

5 NM

AC4 Preceding aircraft

AC3

Wrong target

~3 NM

Downwind Leg

AC1 AC2

AC6 Succeeding aircraft

2 – 2.5 NM

Visual separation Visual separation

OH1 Scenario: -ATCo clears AC6 to maintain visual separation with AC4, - AC6 has visually acquired AC3 in fact (AC4 is not ADS-B out equipped for instance)

30o Intercept

~1 NM

Visual separation ATC separation

3 NM

AC4 Preceding aircraft

AC3 Wrong target

AC2

0.28 NM AC114o

OH1 Scenario: AC6Succeeding aircraft

-ATC expects AC6 is preparing to maintain visual separation from AC4

-AC6 has visually acquired AC3 in fact

19

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図 19 OH1 に対応するイベントツリー(1/2)[7]

図 20 OH1 に対応するイベントツリー(2/2)[7]

20

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図 21 OH1 に対応するフォルトツリー[7]

3.5. ASPA-S&M

S&Mは、en-route空域とTMAにおいて、到着機

の順序づけと間隔保持を行うASAS応用方式であ

る。目的は機体間隔保持の精度を上げること、管制

官のワークロードを減らすこと、CDA(Continuous

Descent Arrivals)に代表されるようにエネルギー

効率の良い降下を可能にすることである。現状の運

用方法では、CDAは滑走路の容量を低下させると

いわれている。これは、管制官が速度調整や誘導の

指示を与えなくても十分に安全な機体間隔を維持

するために、余分なマージンを機体間隔に含めて航

空機を誘導するためである。

CDAを実現するために、各国で様々な運用方法

がとられ始めている。ヒースロー空港では、機体間

隔の保持と順序づけのために、ベクタリング(管制

官による誘導)が積極的に取り入れられている。管

制官は、機体の位置が望ましいフライトレベルから

どれほど離れているか、どのくらい推力や抗力の調

節が必要か、フライトクルーに情報を与えて、間隔

保持を支援する。カナダの主要空港では、自動操縦

装置がCDAの垂直プロファイルに機体を載せる際

にRNAVを利用している。CDAを実現するための

RNAV利用はアムステルダムのスキポール空港で

も適用されているが、この手法の欠点はRNAVに対

応しない航空機に

は適用できないことである。

ルイビル空港では、UPSがRNAVベースのCDA

を実施しており、この結果がS&Mに反映される予

定である。CDAを可能にする順序付けと間隔の保

持 の ため に時 間 管理 を取 り 入れ た Tailored

Arrivalsの試験も各地(ヒューストン、シドニー、

メルボルン、サンフランシスコ、アムステルダム)

で実施されている。

今後S&Mは、ITPの後にRFG会議で本格的に議

論が行われる予定であり、2008年2月現在ではAD

がまとめられつつある段階である。

【AD】

S&M の運用コンセプトを説明するために、図 22、

23 を利用して運用例を示す。航空交通流の合流の

際、現状では図 22 に示す手順がとられている。合

流地点 WPT に向かって飛行中の航空機 D、E、F

に管制指示を与える場合を考える。D と F の間隔

が適切に保持されていないときは、管制官はスピー

ドの指示を出してDとFの間隔を正す必要がある。

管制官が WPT において D、E、F と順序づけるこ

21

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図 22 S&M- 既存の運用手順 [7]

図 23 S&M- S&M で提案する運用手順 [7]

とを決定した場合、スピードかヘディングの指示を

E に与え、D と F に必要に応じてスピードの指示

を与える。管制官は、これらの航空機の位置をモニ

ターで頻繁にチェックしてスピードやヘディング

の指示を出さなければならず、管制官とフライトク

ルーのワークロードが高くなる。

一方で、S&M で提案される手法 (図 23)では、

管制官はそれぞれの航空機に早い段階で先行機を

指示し、順序付けを行う。(例えば、E は D の後、

F は E の後、など。) 航空機は、指定された順番通

り、ある決められた点 (図 23ではACH) において、

割り当てられた間隔を達成することが求められる。

S&M では、“Remain Behind”、“Merge Behind”、

“Radar Vector then Merge Behind”という 3 種

類のマヌーバが指示される。

Remain Behind (図 24)

管制官が指示した航空機の後につき、機体間

隔を保持する。フライトクルーは、管制官が

支持した間隔を保持するよう、スピードを調

整する。

Merge Behind (図 25)

2 機の航空機が、同じウェイポイントに向か

って合流する飛行経路を飛行している場合、

合流地点のウェイポイントにおいて管制官が

指示した航空機の後につき、機体間隔を保持

する。フライトクルーは、管制官が支持した

間隔を保持するよう、スピードを調整する。

Radar Vector then Merge Behind (図 26)

スピード調整のみでは間隔の保持が難しい場

合、管制官はベクタリングの指示をフライト

クルーに与え、先行機の後をつけて飛行する。

例えば、管制官とフライトクルーの音声通信は、

以下のようなフレゾロジーが検討されている。

“Aircraft B, merge behind aircraft A at WPT,

achieve 90 seconds spacing by ACH.”

(航空機B、WPTにて航空機Aの後に合流し、A

CHまでに 90 秒の間隔づけをせよ。)

“Aircraft B, Fly heading 060, merge behind

aircraft A, achieve 90 seconds spacing by WPT.”

22

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図 24 S&M- Remain Behind [7]

図 25 S&M- Merge Behind [7]

図 26 S&M- Radar Vector then Merge Behind

[7]

(航空機B、ヘディング 060、航空機Aの後に合流

し、WPTまでに 90 秒の間隔づけをせよ。)

ただし、Radar Vector then Merge Behind につ

いては、ベクタリングの指示を受けた航空機がどの

程度飛行経路から逸脱するか予測が難しいため、更

なる検討が必要とされている。 RFG では、S&M

の要件を 2010 年度頃にまとめる目標でいるため、

Package 1 では単純なシナリオに対して要件をま

とめ、さらなる議論は Package 1.5 の中で行うこと

が提案されており、今後の展開が期待される。

4. まとめ

本報告書では、ASAS の概念と Package1 に含ま

れる ASAS 応用方式を説明した。ASAS-RFG 会議

で議論が現在進行中の、ITP、VSA、S&M の進捗

状況をまとめた。次回の報告書では、引き続き RFG

会議の動向を追うと共に、RFG 会議外で進められ

ている ASAS 研究・開発状況を紹介したい。

RFG 会議では、参加者の意見が ASAS 応用方式

に反映される。VSA、S&M に国際的な運用共通性

も今後議論されるため、日本の意見を取り入れるこ

とが十分可能である。筆者も研究を通してフィード

バックをはかると共に、読者の皆様からのご意見に

期待したい。

謝辞

本報告書は、2007 年度 電子航法研究所 基礎研

究 「ASAS に関する予備的研究」における調査結果

の一部をまとめたものです。

本報告書をまとめるにあたり、電子航法研究所

小瀬木 滋 上席研究員より有意義な議論とご助言

をいただきました。また、本報告書を電子航法研究

所報告編集委員会に投稿してから、当研究所の出版

物として公開できるに至るまで、約一年間に渡って

ご尽力いただきました電子航法研究所 航空交通管

理領域 山本憲夫 領域長を始め、関係者の皆様に深

く感謝致します。

23

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付録1 ATSA-ITP 要件[3]

【SPR】

SPRを得るにあたり、以下の 3点が検討された。

1. CRM(Collision Risk Model:衝突危険モデル)

の開発: ITP の需要があるさまざまな環境下

において利用できるよう CRM を開発した。例

えば、航空機間の距離、上昇率、飛行経路の形

状、風などによる影響を調べ、安全性の目標値

レベルを満たすよう、フライトレベルを変化さ

せても安全な機体間隔を与えるための前方向

の初期化基準の設定、など。(CRM の詳細は

文献[3]参照)

2. OPA の実施:OSED の運用定義に対して運用

効率に関する要件を導きだす。性能要件はすべ

て、CRM を満たす必要がある。

3. OSA の実施:ITP を適用した際に、フライト

クルーや航空機が危険を起こし得る原因 (ハ

ザード)を洗い出し、ハザードとその影響を制

御するための安全性要件を導き出す。

仮定

SPR を導くにあたり、以下の仮定をおいている。

(ただし、以下にまとめる仮定は主要なもののみで

あり、詳細は文献[3]を参照されたい。) 本文中に

表れる、very often、often、rare、very rare の条

件は表 A.1 にまとめられている。

Qualitative

Frequency

Quantitative

Probability

Very Often 1E-01 to 1E-02

Often 1E-02 to 1E-03

Rare 1E-03 to 1E-04

Very Rare Less than 1E-04

表 A.1 発生頻度と確率

システムの仮定

管制官とフライトクルー間の通信機能は、ITP

実施のために十分な性能を有している。

洋上空域において、4000ft を超える上昇・下

降のリクエストは少ない。

ITP 機と参照機のタイムラグ(ここでは、

“latency”を“タイムラグ”と訳す。)(ただ

し、確認不可能とされる 0.5 秒のタイムラグ

は除く。)は、同じ時間軸方向に働くものとす

る。

ディスプレィ表示に利用するデータにタイム

ラグは含まれない。

OPAの仮定

事故または故意による ITP の誤用について、

OPA ではその影響を考慮しない。

OSAの仮定

初期状態などの要因に基づき、航空機がとり

得る飛行経路についてある確率曲線を仮定す

る。

ITP を行う航空機は、ACAS を装備している

ものとする。(ACAS ディスプレィがフライト

クルーの状況認識能力を高める理由から。)

安全性基準の評価の際、ACAS などの他の安

全策の効果は考慮しない。

ITP を実行する航空機の平均飛行時間は 6 時

間とする。(ちなみに、ITP の実施にかかる時

間は、6.6 分から 13.3 分程度とする。)

ITP 基準に定められた機体間隔について、フ

ライトクルーのヒューマンエラーは正規分布

に従うのもとする。(エラーが大きくなるにつ

れ、発生確率は低くなる。)

フライトクルーは、自らのエラーに気づかな

いものとする。

運用の仮定

機体距離間隔について、航空管制官は運用手

順上の責任を、ITP 機のフライトクルーは実

行上の責任を持つ。

ITP 手順に沿った運用を仮定する。(ITP マヌ

ーバ中は、縦の最小距離間隔は 10NM である、

など。)

ITP の適用を RVSM (Reduced Vertical

Separation Minimum)空域に限定しない。

地形や干渉などの影響によって劣化した

ADS-B 信号を受信する尤度は 10-4/飛行時間

より小さいとする。

フライトクルーと管制官の音声通信は、HF

を仮定する。

ITP は、ACAS の手順を修正しない。

航空機の上昇・降下を不可能にする環境変化

が発生する確率は often 未満である(表 A.1)。

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図 A.1 ADS-B 機能構造

管制官が、ITP 機と参照機との距離(ITP 距

離)を把握していないにもかかわらず ITP を

許可する状態や、ITP 距離が十分でないにも

かかわらず適切に対応しない状態が発生する

確率は often 未満である(表 A.1)。

ITP 機がマック速度変化の基準を満たすか、

管制官の確認が適切でない確率は often 未満

である。

管制官が、ITP が許可された、または ITP の

実施が予想される航空機の検出に失敗する確

率は rare 未満である(表 A.1)。

管制官が、ITP 機と参照機の高度差が 3000ft

以上であるか、適切に確認しない確率は very

often 未満である(表 A.1)。

ITP 機のフライトクルーは、ITP に関して十

分な訓練を受けている。

ITP機の仮定

気圧計の性能は、RVSM 耐空性承認の高度誤

差基準を満たす。

300ft/min で上昇可能である。

GNSS システムの部分的な故障が、ITP 開始

に要求される位置や速度データの精度

(accuracy)や完全性(integrity)を損な

う尤度は、1E-5/飛行時間 未満とする。

フライトクルーが、ITP 最小距離間隔の保持

に失敗する(ITP 最小距離間隔よりも小さい

距離間隔をとる)確率は、very often 未満で

ある(表 A.1)。

フライトクルーが、ITP の中間高度帯で水平

飛行する確率は rare 未満である(表 A.1)。

フライトクルーが、ITP クリアランスをとっ

て再評価してから ITP マヌーバを始めるまで

に、5 分以上遅れる確率は rare である(表

A.1)。

フライトクルーが、参照機が ITP 実施に求め

られる ADS-B データの品質を有しているか

の判断においてエラーを起こす確率は very

often 未満である。

ITP 機は、上昇にかかる時間の 95%において、

±マック 0.002 以内の誤差範囲で速度を維持

できる。

参照機の仮定

気圧計の性能は、RVSM 耐空性承認の高度誤

差基準を満たす。

予想された飛行経路から外れたにもかかわら

ず、管制官にその情報が与えられない尤度

rare 未満である(表 A.1)。

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音声通信を利用する際、ITP 機のフライトク

ルーは ITP のリクエストに、参照機の ID、ITP

距離、前方と後方の相対位置、変更を希望する

高度を含めなければならない。

NUC/NIC/SIL 値に対応しない不適切な対地

速度情報を ADS-B 信号で送る尤度は 1E-5/飛

行時間である。

データ通信における最大時間誤差は 3.0 秒で

ある。

ITP 環境にある参照機の速度計測誤差の 95%

は、±マック 0.002 以内である。

地上の仮定

ITP は、地上システムに新しい機能要件を課

さない。地上では、ITP の運用手順に関する

要件が新たに与えられる。

管制官が利用する可能性がある情報やディス

プレィ表示の効果は、特定の場所で実施する

安全性評価を介して決定する。

要件

以上の仮定もと、ITP に与えられた SPR を以下

にまとめる。(今後、要件の細かい調整が行われる

可能性はある。)図 A.1 に ADS-B の機能構造を示

す。それぞれの SPR が対応するインターフェイス

は、図 A.1 中の記号を参照されたい。

ITP 機に対する SPR(SPR1 から SPR41)

運用の要件(SPR1 からSPR10)

SPR1.

ITP をリクエストする前に、ITP 機フライト

クルーは以下の基準(C1, C2,…C10)が満た

されているか確認しなければならない。

C1:ITP 機が 300ft/min で上昇・降下可能で

あること。

C2:ITP 距離が 15NM (20NM)以上確保でき

ていること。

C3:対地速度の変化が 20 (30)kts 以下である

こと。

C6:高度変更の最大値は 4000ft であること。

C7:ITP 機が、位置と速度の精度と完全性の

条件を満たしていること。

C9:ITP 機と参照機の飛行経路が相似である

こと。

C10:参照機は ADS-B の精度と完全性の条件

を満たしていること。

以上の基準を満たさなければ、ITP 機のフ

ライトクルーは、ITP をリクエストしたりク

リアランスを受けたりしてはならない。

SPR2.

SPR3.

音声通信を利用する際、ITP 機のフライトク

ルーは、管制官にクリアランスを読み返さな

ければいけない。

SPR4.

管制官がクリアランスを出した高度、参照機、

マヌーバの種類が、ITP のリクエストに対応

しない場合、またはリクエストしていないに

もかかわらずクリアランスを受け取った場合

は、フライトクルーはマヌーバを実施せずに

管制官にクリアランスを確認しなければなら

ない。

SPR5.

ITP クリアランスを受け取ってから以下の

ITP 基準が満たされているか、ITP 機のフラ

イトクルーは確認しなければならない。

C2:ITP 距離が 15NM (20NM)以上確保でき

ていること。

C3:対地速度の変化が 20 (30)kts 以下である

こと。

C7:ITP 機が位置と速度の精度と完全性の条

件を満たしていること。

C9:ITP 機と参照機の飛行経路は相似である

こと。

C10:参照機は ADS-B の精度と完全性の条件

を満たしていること。

以上の基準が満たされない場合、フライト

クルーは ITP を実施してはならない。

SPR6.

ITP マヌーバ中、フライトクルーは要求され

たマック数を維持しなければならない。

SPR7.

ITP マヌーバ中は、フライトクルーは ITP ク

リアランスを修正してはならない。

SPR8.

ITP マヌーバ中に、上昇率が ITP 基準を満た

さないことに気づいた場合、フライトクルー

は、不足分の修正を試みなければならない。

SPR9.

ITP マヌーバ中に、ITP の実施が不可能にな

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った場合、フライトクルーは、その空域で定

められた緊急事態の対応手順に従わないとい

けない。

SPR10.

なんらかの理由により ITP 距離が小さくなり、

衝突の可能性が生じた場合は、フライトクル

ーはその空域で定められた緊急事態への対応

手順に従わないといけない。

機能の要件(SPR11 からSPR22)

SPR11.

ITP 基準に影響を及ぼす機能を故障させる原

因が、他の ITP 基準にも影響を及ぼすような

相関関係となってはならない。

SPR12.

以下のデータは、ITP 機のフライトクルーが

利用可能なものでなければいけない。

- 垂直速度

- 上昇・降下性能を保証するデータ

- マック数

SPR13.

ITP 機は、以下の最小限のデータセットと装

備を備えなければならない。(B2(図 A.1))

- 水平速度

- 水平速度の精度

- 水平位置

- 水平位置の精度

- 水平位置の完全性が包括する範囲

- 気圧高度

SPR14.

以下のデータは、ITP 装置を利用し、ヒュー

マンマシンインターフェイスを介して、フラ

イトクルーに表示されなければならない。

- 参照機の ID

- ITP 距離

- ITP 機と相対的な参照機の位置

SPR15.

以下のデータが、自機が ITP を開始する基準

を満たしているかフライトクルーが評価する

ために、ITP 装置を利用してヒューマンマシ

ンインターフェイスを介し、フライトクルー

に提供されなければいけない。

- 対地速度の変化

- ITP 機の監視データの品質

- 参照機の監視データの品質

- 進行方向の状態

SPR16.

ITP 距離は、ITP 装置を利用して計算さ

れなければならない。(F1(図 A.1))

SPR17.

フライトクルーに表示される ITP 距離は、実

際は ITP 開始基準を満たしていないにもかか

わらず、基準を満たしているように表示され

てはいけない。(F1(図 A.1))

SPR18.

対地速度の変化 (微分値)は ITP装置を利用し

て計算されなければならない。(F1(図 A.1))

SPR19.

フライトクルーに表示される対地速度の変化

(微分値)は、実際には ITP 開始基準を満たし

ていないにもかかわらず、基準を満たしてい

るように表示されてはいけない。(F1(図 A.1))

SPR20.

フライトクルーに、データ精度の値が表示さ

れるとき、少なくとも影響の及ぶ 95%は真値

と一致しなければならない。(F1(図 A.1))

SPR21.

フライトクルーに、陽に完全性に関する確率

などの情報値が表示されるとき、定義された

完全性の範囲と確率の値に一致しなければな

らない。(F1(図 A.1))

SPR22.

参照機と ITP 機の経路角は、ITP 装置を利用

して計算されなければならない。(F1(図 A.1))

性能の要件(SPR23 からSPR41)

SPR23.

ITP 装置が、位置情報や ITP 距離について

5NM を超える誤差を生じる確率は 1E-05 以

下でなければならない。(D→G1(図 A.1))

SPR24.

ITP 装置が、自機データの精度と完全性のレ

ベルに関して間違った情報を提供する尤度は

1E-03/飛行時間より小さくなければならない。

(D→G1(図 A.1))

SPR25.

ITP 装置が、ITP 機の周りを飛行する航空機

の ADS-B を破損させる尤度は、1E-03/飛行時

間より小さい。(D→G1(図 A.1))

SPR26.

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ITP 機の水平位置の精度が、少なくとも 95%

の割合で 0.3NM を満たさない場合、ITP マヌ

ーバをリクエストしてはならない。(G1(図

A.1))

SPR27.

ITP機の水平位置の完全性が0.6NMの範囲で

完全性のレベル1E-05を満たさない場合、ITP

マヌーバをリクエストしてはならない。

SPR28.

参照機の対地速度情報が ITP 装置により破損

し、それが航空機またはフライトクルーに提

供される尤度は 1E-03/飛行時間未満でなけれ

ばいけない。(D→G1(図 A.1))

SPR29.

自機の対地速度が破損する尤度は、1E-03/飛

行時間未満でなければいけない。(A1→G1(図

A.1))

SPR30.

ITP 機の水平速度の精度が、95%の割合で

10m/sec (19.4 kt)を満たさない場合、ITP マ

ヌーバをリクエストしてはならない。(G1(図

A.1))

SPR31.

図 A.1 のインターフェイス D から E1 間に付

加される、補正されていない、または報告さ

れていない時間誤差は 0.5 秒を超えてはいけ

ない。(D→E1(図 A.1))

SPR32.

ITP 機の位置情報のための自機の状態データ

の時間誤差は 3.0 秒を超えてはならない。(A2

→B2(図 A.1))

SPR33.

ITP 装置が参照機の位置情報に関してエラー

を生じ、それを ITP 距離の算出に利用する尤

度は 1E-03/飛行時間未満でなければいけない。

(D→G1(図 A.1))

SPR34.

ITP 装置によって自機の位置情報が破損する

尤度は 1E-03/飛行時間未満でなければいけな

い。(A2→G1(図 A.1))

SPR35.

ITP 機の位置データと参照機の位置データの

時間遅れの誤差は、算出時において 1.075 秒

を超えてはならない。(B2→F1(図 A.1))

SPR36.

ITP 距離が ITP 開始基準を満たしているかデ

ィスプレィに表示する場合は、わかりやすく、

あいまいさのない表示を与えなければならな

い。(G1(図 A.1))

SPR37.

ITP 装置で計算する際に、ITP 距離にエラー

が生じる確率は 1E-03 未満でなければいけな

い。(B2→F1(図 A.1))

SPR38.

対地速度の変化(微分)が表示される場合、どこ

で航空機が接近する状態となり得るか、明確

に示さなければならない。(G1(図 A.1))

SPR39.

対地速度の変化(微分)が ITP 開始の基準を満

たしているかディスプレィに表示する場合は、

わかりやすく、あいまいさのない表示を与え

なければならない。(G1(図 A.1))

SPR40.

ITP 機と参照機のデータの品質が ITP マヌー

バの最小要件を満たすか表示する場合は、わ

かりやすく、あいまいさのない表示を与えな

ければならない。(G1(図 A.1))

SPR41.

ITP 機と参照機が相似の飛行経路をとる場合

ITP 開始基準を満たしているかのディスプレ

ィ表示は、わかりやすく、あいまいさのない

表示を与えなければならない。(G1(図 A.1))

参照機に対する要件(SPR42 から SPR45)

機能の要件(SPR42)

SPR42.

参照機は、以下のデータを含む最小限のデー

タセットを送信する。(D→E1(図 A.1))

- 水平速度

- 水平速度の精度

- 水平位置

- 水平位置の精度

- 水平位置の完全性が含む範囲

- 気圧高度

- 航空機 ID

性能の要件(SPR43 からSPR45)

SPR43.

参照機の水平位置の精度が少なくとも 95%が

±0.3NM の範囲にない場合、ITP マヌーバが

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【INTEROP】 リクエストされてはいけない。

仮定 SPR44.

参照機の水平位置の完全性が、±0.6NM の範

囲において 1E-05 のレベルを満たしていない

場合、ITP マヌーバがリクエストされてはい

けない。

ITP の INTEROP (interoperability:運用共通性)

要件は、参照機と ITP 機が以下の能力を有するこ

とを仮定して与えられる。

参照機の仮定

SPR45.

参照機の水平速度の精度が少なくとも 95%が

±10m/s (19.4kt) の範囲にない場合、ITP マ

ヌーバがリクエストされてはいけない。

地上に対する要件(SPR46 から SPR50)

運用の要件

SPR46.

管制官は、ITP クリアランス対する確認の応

答や、目標高度に達した際の報告が得られな

い場合は、フライトクルーに連絡を取らなけ

ればならない。

SPR47.

目標高度に達した報告の際に、ITP 機が間違

った高度を飛行している場合、管制官はすぐ

に ITP 機に連絡をしなければならない。

SPR48.

管制官は、以下の基準を満たすか確認しなけ

ればならない。

C2:ITP 距離が 15NM 以上であること。

C4:接近するマック速度の変化が 0.04M 以下

であること。

C5:参照機がマヌーバしていないこと。また、

ITP 中にマヌーバをしないことが予測される

こと。

C6:高度変更の最大値が 4000ft であること。

C8:ITP 機が参照機と同じ経路にいること。

C9:ITP 機と参照機の経路が相似であること。

C11:リクエストが ITP であること。

SPR49.

管制官は、ITP 機と参照機に、同時に別の ITP

実施を許可してはならない。ただし、管制官

は、ITP を実施中の ITP 機を、別の ITP にお

ける参照機として扱う場合があり得る。

SPR50.

音声通信を利用する場合、管制官は参照機 ID

と許可された変更高度を情報に入れなければ

ならない。

監視データと融合できるように、機上システ

ムの情報を処理して保存できる能力

監視データをデータリンクの規格に一致する

ように、ADS-B 信号として初期化し送信する

能力

ITP機の仮定

監視データと融合できるように、機上システ

ムの情報を処理して保存できる能力

ADS-B 信号を受信し、それを航空機システム

の規格に一致するように監視データに組み合

わせる能力

フライトクルーに提示する準備段階において、

自機の監視データと受け取った監視データを

処理して関連付ける能力

フライトクルーに監視データを提示する能力

要件

INTEROP 要件 (IR)を以下にまとめる。

全般的な要件(IR1)

IR1.

以下の ADS-B パラメータは、参照機から送信

されなければいけない。

- 航空機の識別番号(ID)

- 水平位置

- 垂直位置

- 対地速度(または相対的な対地速度)

- 監視の品質指標(ITP 用のさまざまな機

能のために、監視の品質が利用可能なレ

ベルであるか。)

ADS-Bの送受信に関する要件(IR2)

IR2.

ADS-B 監視報告の初期化と自機の監視デー

タと他の監視データとの関連付けを可能にす

る ADS-B 情報を、ITP 機が受信すること。

適用性の時間に関する要件(IR3)

IR3.

参照機は、受信した ADS-B データの適用性

の時間を決定することができる。

航空機の識別に関する要件(IR4 からIR6)

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IR4.

参照機は、24 ビットの航空機アドレスを

ADS-B メッセージに含めて送信しなければ

ならない。

IR5.

参照機は、航空機の ID を ADS-B メッセージ

に入れて送信しなければならない。

IR6.

ICAO Doc. 4444:PANS/ATM (管制官が音声

通信で利用するフレゾロジーの評価基準)の

Chapter1, Definitions と Appendix 2, 2.2 が

ITP 機に適用される。

水平距離に関する要件(IR7 からIR12)

IR7.

参照機は、関連した品質指標に一致する水平

距離を送信しなければならない。

IR8.

参照機は、位置情報のために、適切な品質指

標を送信しなければならない。

IR9.

指標として、RTCA/DO-242 に規定されてい

る NUCP か、RTCA/DO-242A に規定されて

いる NIC、NACPまたは SIL を利用しなけれ

ばならない。

IR10.

NUCP を利用する場合、航空機装置や設計は

HPL を ADS-B 伝送機能に提供しなければな

らない。

IR11.

HPL と HFOM が提供された場合、参照機の

機能は、HPL の品質指標に基づくべきである。

IR12.

NUCPと NIC/NACP/SIL の実施の識別は、参

照機に提供されなければならない。

垂直位置の要件(IR13 からIR17)

IR13.

参照機は、気圧高度を送信しなければならな

い。

IR14.

ITP 機は、気圧高度を利用して 1013.25hP を

基準に相対的な高度を決定しなければいけな

い。

IR15.

参照機は、速度と関連した品質指標を送信し

なければならない。

IR16.

参照機と ITP 機は、すべての速度要素は

WGS84 を参照して決められなければいけな

い。

IR17.

ADS-B メッセージの中で送信される品質指

標は、機上で補償されない時間差を考慮しな

ければならない。

参考文献

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Use of Airborne Separation Assurance Systems”,

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applications version 2.2”,

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Interoperability Requirements Document for

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Application Definition Sub-group, “Package I:

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Separation on Approach (ATSA-VSA)

Operational Safety Assessment (OSA)”, 0.3 ed.,

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2007-present”, 2007.

[7] Package I Requirements Focus Group

Application Definition Sub-group, “Package I:

Enhanced Sequencing and Merging Operations

(ASPA-S&M) Application Definition”, 1.7.5 ed.,

2008.

[8] 小瀬木 滋 上席研究員(電子航法研究所)との

プライベートディスカッション, 2007-2008.